APIキー台帳の作り方|項目テンプレートと運用ルール
生成AIのAPIキー台帳の作り方を解説します。台帳に必要な管理項目(必須と任意)、項目ごとの書き方、書いてはいけない情報、更新のタイミングと担当、プロバイダごとの識別子の違い、台帳が形骸化しないための運用ルールまでをまとめました。

API キー台帳は、「このキーは誰が、何のために、どの予算で使っているか」を 1 行で答えられる表です。必須の項目は、キーの識別子・プロバイダ・用途・利用者・部署・発行日・状態の 7 つ。これに失効予定日と備考を足せば、中堅企業の運用には十分です。
台帳づくりで難しいのは項目設計より、更新され続けることです。この記事では、管理項目の決め方と、台帳を形骸化させない運用ルールを説明します。すぐに使える最小構成の表は「APIキー台帳テンプレート|Excelで始める最小構成」にまとめています。
API キー台帳の目的
台帳の目的は次の 3 つです。目的が決まると、必要な項目も決まります。
| 目的 | 台帳で答える問い | 必要な項目 |
|---|---|---|
| セキュリティ | 退職者・委託先の手元にキーが残っていないか | 利用者・状態・失効予定日 |
| 費用 | どの部署がいくら使っているか | 部署・用途(プロジェクト) |
| 監査・説明 | いつ、誰の承認で発行したか | 発行日・発行者・承認者 |
最初から 3 つの目的をすべて満たそうとすると項目が増え、記入の負担で更新が止まります。まずはセキュリティと費用の 2 つに絞り、監査の項目は必要になってから足すのが現実的です。
管理項目——必須 7 項目と任意項目
必須の 7 項目
| 項目 | 書き方 | 注意点 |
|---|---|---|
| キーの識別子 | キー名と、プロバイダが表示する識別子(末尾数桁など) | キーの本体(秘密の文字列)は書かない |
| プロバイダ | OpenAI/Azure OpenAI/Claude/AWS Bedrock/Google Vertex AI | 同じプロバイダで組織・プロジェクトが複数あるなら、それも書く |
| 用途 | 「社内 FAQ ボット(本番)」のように、システム名と環境 | 「検証」「テスト」だけの記載は棚卸しで判断できない |
| 利用者 | 個人のキーは本人、システムのキーは管理責任者 | 退職・異動時に引き継ぐ相手が分かるようにする |
| 部署 | 費用を負担する部署 | 利用者の所属と違う場合がある(委託開発など) |
| 発行日 | 年月日 | 未使用期間の判断に使う |
| 状態 | 有効/停止予定/失効済み | 失効済みの行も消さずに残す |
任意の項目
| 項目 | 使いどころ |
|---|---|
| 失効予定日 | PoC や期間限定の用途。到来したら失効か延長を判断 |
| プロジェクト | 部署をまたぐ取り組みで費用をまとめたいとき |
| 保管場所 | どのシークレット管理サービスのどの名前で置いているか |
| 発行者・承認者 | 監査対応が必要になったとき |
| 月額の目安 | 予算管理と突き合わせたいとき |
| 備考 | 共用している事情、分割の予定など |
書いてはいけない情報
台帳は多くの人が見る前提で作ります。次の情報は書きません。
- キーの本体: 秘密の文字列そのもの。表計算ファイルに書くと、ファイルの共有範囲がそのまま漏えい範囲になる
- 認証情報の一式: Azure のサービスプリンシパルのシークレットや、クラウドのアクセスキーのシークレット部分も同様
- プロンプトや業務データの中身: 用途は「何のシステムか」で足りる
識別子として書くのは、キー名とプロバイダの画面に表示される部分的な文字列までです。これだけあれば、プロバイダの管理画面と突き合わせられます。
プロバイダごとの「キー」の単位の違い
台帳の 1 行を何にするかは、プロバイダによって変わります。費用を見える単位が違うためです。
| プロバイダ | 台帳の 1 行の単位 | 補足 |
|---|---|---|
| OpenAI | API キー | プロジェクトの中にキーがある。プロジェクト名も記録する |
| Claude(Anthropic) | API キー | ワークスペースの中にキーがある。ワークスペース名も記録する |
| Azure OpenAI | リソースとデプロイメント | リソースのキーは利用者ごとに分かれないため、デプロイメント単位で管理する |
| AWS Bedrock | AWS アカウントとリージョン・モデル | 利用者ではなく、アカウントの権限(IAM)で利用を管理する |
| Google Vertex AI | GCP プロジェクトとロケーション・モデル | 同上。プロジェクトを部署ごとに分けると管理しやすい |
OpenAI と Claude は、API キーごとに利用量が見えるため、キーを利用者や部署に割り当てれば個人別・部署別の費用まで追えます。Azure OpenAI・AWS Bedrock・Google Vertex AI は、利用量が見えるのがデプロイメントやモデルの単位までなので、台帳の 1 行もその単位にするのが実態に合います。部署別に見たいなら、リソースやアカウント、プロジェクトを部署ごとに分けておきます。
更新のタイミングと担当
台帳が形骸化する最大の原因は、「更新のきっかけ」が決まっていないことです。
| タイミング | 更新する人 | 更新内容 |
|---|---|---|
| キーの発行時 | 発行した人 | 新しい行を追加 |
| 退職・異動時 | 情シス(人事手続きと連動) | 利用者の変更、または状態を失効済みに |
| プロジェクト終了時 | プロジェクトの責任者 | 状態を失効済みに |
| 月次の棚卸し | 情シス | プロバイダ側の実態との差分を反映 |
発行時の記入を徹底しても、記入漏れは必ず出ます。そのため月次の棚卸しで、プロバイダ側の実態から台帳を直す工程を必ず入れます。台帳は「申告で作るもの」ではなく「実態と突き合わせて直し続けるもの」と位置づけると、記入漏れがあっても破綻しません。
形骸化させないための運用ルール
- 台帳の置き場所は 1 か所: 部署ごとに別の台帳を持たない。経路をまたいで 1 つにする
- 失効済みの行も残す: 過去のキーの持ち主が後から分かると、請求の説明や監査に使える
- 「持ち主不明」を行として残す: 棚卸しで見つかった不明キーは、判明するまで「不明」で登録し、期限を切って失効を判断する
- 月次の費用確認と同じ場で見直す: 費用が大きいキーから確認すれば、限られた時間で効果の大きい所から直せる
- 台帳の変更履歴を残す: 表計算ファイルなら版の履歴、変更者が分かる共有方法を選ぶ
台帳だけでは足りない点
手作業の台帳には限界があります。
- 台帳にないキーは台帳からは見つからない: 見つけるにはプロバイダ側の一覧と突き合わせるしかない
- キーごとの費用は台帳に書けない: 毎月の利用量を転記し続けるのは現実的でない
- 急な利用の増加に気づけない: 台帳は静的な記録で、今日の使われ方は分からない
この 3 点は、プロバイダの利用量データからキーの一覧と費用を自動で作る仕組みで補えます。台帳は「キーの持ち主と用途」を決める場所、利用量の可視化は「実態」を映す場所、と役割を分けると、両方が長続きします。
よくある質問
Q. 台帳は情シスと各部署のどちらが持つべきですか? ファイルの管理者は情シス、各行の記入は発行した人、と分けます。部署ごとに別の台帳を持つと、経路をまたいだ全体像が見えなくなるため、置き場所は 1 か所にします。
Q. ChatGPT などのサブスクリプションも台帳に載せますか? API キーを使わないサブスクリプションは、キーの台帳とは別に、契約とアカウントの台帳で管理するのが分かりやすいです。費用の構造(定額か従量か)も管理の仕方も違うためです。
Q. 個人名を台帳に書いてよいですか? 社内の管理台帳として、利用者の氏名や社員番号を書くのは一般的です。ただし閲覧できる範囲は社内の関係者に絞り、社外に共有するときは部署名までにします。
まとめ
- API キー台帳は「誰が、何のために、どの予算で使っているか」を 1 行で答える表
- 必須はキーの識別子・プロバイダ・用途・利用者・部署・発行日・状態の 7 項目。キーの本体は書かない
- Azure・Bedrock・Vertex AI は利用者ごとのキーがないため、デプロイメントやモデルの単位で 1 行にする
- 発行時の記入に頼らず、月次の棚卸しで実態から台帳を直す
- 台帳にないキーの発見と、キーごとの費用は、利用量データからの自動化で補う
ManageAI は、読み取り専用キーの登録だけで、各プロバイダの API キー(Azure・Bedrock・Vertex AI はデプロイメントやモデルの単位)を自動で一覧にし、部署・利用者・プロジェクトに割り当てて費用を集計します。台帳の「実態側」を毎日更新される形で持てます。モニター企業を募集中です。
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