ManageAIが「実費」と「概算」を分ける理由
ManageAIは費用を「実費」(プロバイダの請求系API由来)と「概算」(トークン×単価)に分けて表示し、混ぜません。なぜ2つの数字が必要なのか、それぞれの出どころと粒度、画面上の表示のされ方、乖離が異常検知のシグナルになる理由、経理と経営報告での使い分けを説明します。
ManageAI の画面には、費用が実費と概算の 2 種類で表示されます。同じ「費用」を 2 つ並べるのは冗長に見えるかもしれませんが、これは ManageAI の信頼性の核になる設計です。
この記事では、2 つの数字の出どころと粒度、画面での表示、乖離の意味、使い分けを説明します。サービス全体は「ManageAI(マネージエーアイ)とは」を参照してください。
2 つの数字の出どころ
| 実費 | 概算 | |
|---|---|---|
| 出どころ | プロバイダの請求系 API(OpenAI Costs API、Azure Cost Management、Anthropic のコスト、AWS Cost Explorer、Google Cloud Billing) | トークン数 × モデル別単価(ManageAI の単価マスタ) |
| 粒度 | プロジェクト/ワークスペース/リソース/リージョン × 日次 | API キー × モデル × 1 時間 |
| 請求書との突合 | できる | できない(ずれる) |
| 反映の速さ | 数時間〜1〜2 日遅れ | 収集した直後(15 分周期) |
| 出せる単位 | 全社、プロジェクト | 部署、利用者、API キー、モデル |
つまり、「請求書と一致する数字」と「部署・利用者別の数字」は、同じ数字では作れません。各プロバイダの請求系 API はプロジェクト単位までしか返さず、キー・利用者単位の実費は存在しないためです。
プロバイダ別の実費の粒度と反映
| プロバイダ | 実費の粒度 | 反映の目安 | 補足 |
|---|---|---|---|
| OpenAI | プロジェクト × 日次(USD) | 数時間 | Costs API 由来 |
| Azure OpenAI | リソース × 日次(請求通貨) | 24〜48 時間 | 日本の従量課金は円建て。無料試用版など非対応の契約は概算のみ |
| Claude | ワークスペース × 日次(USD) | 約 1 日 | UTC 日の確定後に反映 |
| AWS Bedrock | リージョン × 日次(USD) | 約 1 日 | Cost Explorer 由来。Marketplace 経由のモデルも合算 |
| Google Vertex AI | プロジェクト × 日次 | 請求エクスポート次第 | BigQuery の請求エクスポートが前提 |
「実費」と言っても、プロバイダごとに粒度も通貨も遅れも違います。ManageAI は、これらを日次の実費として全社・プロジェクト単位に揃え、円/ドルの切替で見られるようにしています。
なぜ混ぜてはいけないのか
実費と概算を同じ「費用」として 1 つの列に混ぜると、次のことが起きます。
- 経理に提出した部署別の合計が、請求書と一致しない。理由を毎月説明することになる
- 概算で評価された部署から「その数字は正確なのか」と反発が出る
- 概算と実費の差が見えなくなり、単価改定や二重計上に気づけない
ManageAI は、この 2 つを画面上で常に区別して表示し、混ぜません。これは要件として定めている設計方針です。
画面での表示
| 画面 | 表示 |
|---|---|
| 全社サマリー | 「期間コスト(実費・請求額と突合可能)」と「期間コスト(概算・トークン × 単価)」を隣り合うカードに並べる |
| プロジェクト別 | 実費カードと概算カードの 2 枚を並記(プロジェクトは実費が取れる唯一の粒度) |
| 部署別・ユーザー別・API キー別 | 概算のみ。見出しに「概算」と明記 |
| 粒度限界バナー | 未割当キーがあるときに「費用内訳は概算値・請求額は実費が正」と表示 |
| 月間予算消化率 | 全社スコープは実費を優先し、実費未取得のときだけ概算 |
全社サマリーで実費と概算を隣に置くのは、両者の差(乖離)を利用者が自然に認識できるようにするためです。
概算の計算方法
概算は、モデル別の単価マスタから次のように計算します。
- 非キャッシュ入力 × 入力単価 + キャッシュ入力 × キャッシュ単価 + 出力 × 出力単価
- 単価は適用開始日付きで管理し、利用日時点の最新版を使う(単価改定に追随)
- モデル名は完全一致 → 最長一致で解決(日付付きのモデル名も同じ単価に寄せる)
- 単価が未登録のモデルは費用に計上されず、単価マスタへの追加後に日次補正で再計算される
単価マスタはモデルの追加や価格改定への手動追随が必要で、この保守自体を ManageAI が担っています。
乖離は異常検知のシグナル
概算と実費の差は、ゼロにはなりません。ManageAI では、Azure・AWS Bedrock の実測で差は 1〜1.8% でした(Bedrock の差分は日本ルーティングの単価差によるものです)。
重要なのは、差の大きさそのものより、差が急に広がったときです。
| 差が広がる原因 | 例 |
|---|---|
| 単価改定 | プロバイダが単価を変えたが、単価マスタの更新前 |
| 新しいモデル | 単価未登録のモデルが使われ始めた |
| 二重計上 | 収集のバケット境界のずれで同じ利用が重複した |
| 契約形態の違い | 円建て契約、リージョン別の単価差、キャッシュの扱い |
実際に、Azure の二重計上の不具合は、実費との突合で概算が大きく上振れしたことから発見されました。2 つの数字を分けて持つことは、正確性のためだけでなく、異常に気づくためでもあります。
使い分け
| 用途 | 使う数字 |
|---|---|
| 経理への計上、請求書との突合、全社予算の消化管理 | 実費 |
| 部署別の内訳、前月比、部署間の比較 | 概算(実費との差を併記) |
| 利用者・キー別の異常検知、使いすぎの把握 | 概算 |
| 当日の状況(実費がまだ確定していない期間) | 概算 |
概算で困るのは、経理計上と、実際に部署の予算から引くチャージバックの 2 つだけです。部署別の判断材料としては、概算で十分に機能します。
概算が出ないケース・実費が出ないケース
| ケース | 画面の表示 | 対処 |
|---|---|---|
| 単価未登録の新しいモデル | 概算に計上されない(トークンは表示) | 単価マスタへ追加後、日次補正で再計算される |
| 実費 API 非対応の契約(Azure の無料試用版など) | 実費が空。概算のみ | 概算で運用。契約変更後に実費が出る |
| Vertex AI で請求エクスポート未設定 | 実費が空。利用量と概算は表示 | 請求エクスポートを有効化 |
| Bedrock で Cost Explorer 未有効化 | 実費が空。概算のみ | Cost Explorer を有効化 |
| 実費の反映待ち(当日〜翌日) | 実費が暫定または空 | 「○日まで日次確定済み」を確認し、確定後に締める |
チャージバックへの適用
部署の予算から実際に費用を引くチャージバックでは、概算をそのまま請求額にすると、合計が請求書と一致しません。実務では次の方法が使われます。
- 全社の実費(請求書と一致)を分母にする
- 部署別の概算の構成比で実費を按分する
- 未割当分は共通費として扱うか、ルールを決めて按分する
この方法なら、部署別の合計が請求書と一致し、部署間の比率は概算に基づきます。配賦の方法は「生成AIコストの配賦方法3パターン|キー・タグ・按分」で詳しく扱っています。
突合の運用
月次の締めでは、次の順に突合します。
- プロバイダの請求書と、ManageAI の全社実費の月次合計を比べる
- 全社実費と、部署別概算の合計を比べ、差の割合を記録する
- 差が前月より広がっていれば、単価改定・新モデル・二重計上を順に確認する
日次の確定バッチが直近 3 日分を再取得して速報値を補正するため、月初の数日は速報値として扱い、確定してから締めます。
よくある質問
Q. 利用者別の費用は正確ですか? 概算です。各プロバイダの実費データがプロジェクト単位までしか出ないため、利用者・キー単位は単価表から計算した値になります。画面上で「概算」と明記し、実費とは混ぜません。
Q. 概算の精度を上げられますか? 単価マスタの追随と、実費との突合で保っています。概算はあくまで内訳の判断材料で、経理計上は実費で行う前提です。
Q. 実費はいつ確定しますか? プロバイダにより数時間〜1〜2 日遅れます。日次の確定バッチで直近 3 日分を補正し、確定済みの最終日を画面に表示します。
まとめ
- 実費はプロバイダの請求系 API 由来で請求書と一致するが、プロジェクト単位まで。概算はトークン × 単価で、部署・利用者・キー単位まで出せるがずれる
- ManageAI は 2 つを常に区別して表示し、混ぜない。全社サマリーでは隣り合うカードに並べる
- 概算と実費の差(実測 1〜1.8%)が急に広がったときは、単価改定や二重計上のシグナル
- 経理と全社予算は実費、部署別と異常検知は概算。月次で突合する
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