生成AI利用のセキュリティリスク一覧|企業が対策すべき8項目
企業の生成AI利用で対策すべきセキュリティリスクを8項目に整理します。機密情報の入力、学習への利用、外部への保存、APIキーの漏えい、不正確な出力、権利侵害、シャドーAI、外部ツールへの依存について、何が起きるか・どの層で対策するか・優先度の付け方を情シス・法務向けに解説します。

企業の生成AI利用で対策すべきセキュリティリスクは、①機密情報の入力、②学習への利用、③外部への保存、④APIキーの漏えい、⑤不正確な出力、⑥権利侵害、⑦シャドーAI、⑧外部ツールへの依存の8項目に整理できます。すべてを一度に対策する必要はなく、自社の使い方に照らして、起きやすさと影響の大きさで優先度を付けます。
この記事では、8項目それぞれについて、何が起きるか、どの層で対策するかを説明します。対策の設計は「企業の生成AIセキュリティ対策|入力・出力・アクセスの3層」、全体像は「生成AI導入のセキュリティ 完全ガイド」を参照してください。
8項目の一覧
| # | リスク | 何が起きるか | 主な対策の層 |
|---|---|---|---|
| 1 | 機密情報の入力 | 社外秘・個人情報をプロンプトに入れてしまう | 入力(ルール・教育・技術的な制御) |
| 2 | 学習への利用 | 入力した内容がサービスの学習に使われる | 契約・設定(利用する経路の選定) |
| 3 | 外部への保存 | プロンプトや応答が、提供元や周辺ツールに保存される | 契約・ツールの選定 |
| 4 | APIキーの漏えい | キーが流出し、不正利用で費用が発生する | アクセス(キーの管理・監視) |
| 5 | 不正確な出力 | 誤った内容をそのまま業務や対外資料に使う | 出力(確認の手順・教育) |
| 6 | 権利侵害 | 生成物が他者の著作物などに類似する | 出力(用途の制限・確認) |
| 7 | シャドーAI | 会社が把握していない個人契約や無料版の利用 | 可視化・ルール |
| 8 | 外部ツールへの依存 | 周辺ツールの停止で、生成AIの利用自体が止まる | 構成(ツールの選定) |
1. 機密情報の入力
最も多く、最も影響の大きいリスクです。社員が業務の効率化のために、顧客情報、契約書、未発表の製品情報などをプロンプトに入れてしまうことが起こります。
対策:
- 入力してよい情報・いけない情報の基準をガイドラインで示す(禁止の列挙より判断基準)
- 会社が契約した経路(学習に使われない設定の法人向けプランや API)を用意し、個人の無料版を使わせない
- 必要に応じて、入力内容を検査する仕組み(個人情報の検出など)を検討する
2. 学習への利用
個人向けの無料サービスなどでは、入力した内容がサービスの改善(学習)に使われる設定になっていることがあります。一方、多くの法人向けプランや API では、既定で学習に使わない扱いです。
対策: 利用する経路ごとに、学習への利用の扱いを規約と設定で確認し、会社として使う経路を決めます。条件は各社の規約で変わることがあるため、定期的に確認します。
3. 外部への保存
学習に使われなくても、プロンプトや応答が提供元に一定期間保存される場合があります(不正利用の監視のためなど)。また、生成AIの前段に置くゲートウェイや監視ツールなど、周辺のツールがプロンプトを保存する場合もあります。
対策: 提供元の保存期間と用途を規約で確認します。周辺ツールを導入するときは、プロンプトの原文を取得・保存するかを必ず確認します。詳しくは「プロンプトが外部に保存されるリスク|ツール選定の確認点」を参照してください。
4. APIキーの漏えい
APIキーがソースコード、チャット、退職者の手元などから流出すると、第三者が会社の予算で API を使える状態になります。情報の漏えいだけでなく、費用の面の被害が大きいリスクです。
対策: キーの台帳と棚卸し、シークレット管理サービスでの保管、キーごとの利用量の急増の監視、即時に失効できる体制を整えます。詳しくは「APIキー漏えいを検知する方法」を参照してください。
5. 不正確な出力
生成AIは、もっともらしいが誤った内容を出力することがあります。確認せずに対外資料や意思決定に使うと、信用や業務に影響します。
対策: 生成物を「下書き」として扱い、人が確認する手順を業務に組み込みます。事実確認が必要な用途(数値・法令・固有名詞)を明示し、教育で周知します。
6. 権利侵害
生成物が既存の著作物や商標に類似し、権利侵害を問われる可能性があります。画像や文章を対外的に公開する用途で特に注意が必要です。
対策: 対外公開の用途では確認の手順を設け、特定の作品や作家に似せる指示を禁止します。法務と相談して、用途ごとの扱いを決めます。
7. シャドーAI
会社が把握していない個人契約のサービスや無料版の利用です。会社が用意した経路が使いにくい、承認に時間がかかる、といった理由で起きます。
対策: 禁止するより、会社の経路を使いやすくするのが効果的です。会社の経路の利用状況を可視化し、使われていない部署に理由を聞くと、シャドーAIの原因が見えてきます。
8. 外部ツールへの依存
生成AIの前段にゲートウェイやプロキシを置くと、そのツールが停止したときに生成AIの利用自体が止まることがあります。可視化や統制のために入れたツールが、業務の単一障害点になるリスクです。
対策: ツールが通信経路に入る方式(介在型)か、入らない方式(非介在型)かを確認し、停止時の影響を評価します。考え方は「生成AI導入のセキュリティ 完全ガイド」で整理しています。
優先度の付け方
8項目を、起きやすさと影響の大きさで並べます。一般的な企業での目安は次のとおりです。
| 優先度 | リスク | 理由 |
|---|---|---|
| 高 | 1. 機密情報の入力、7. シャドーAI | 起きやすく、影響が大きい。ルールと経路の整備で大きく減らせる |
| 高 | 4. APIキーの漏えい | 起きたときの費用の被害が大きい。監視で早く気づける |
| 中 | 2. 学習への利用、3. 外部への保存 | 経路とツールの選定で防げる。導入時に確認すれば継続の手間は小さい |
| 中 | 5. 不正確な出力 | 業務の手順と教育で対策する |
| 用途次第 | 6. 権利侵害 | 対外公開の用途があれば優先度が上がる |
| 構成次第 | 8. 外部ツールへの依存 | 介在型のツールを使う場合に優先度が上がる |
優先度は、自社の使い方で変わります。まず「誰が・どの経路で・何に使っているか」を把握することで、どのリスクが現実に起きうるかが分かります。
リスクの把握から始める
8項目の対策を検討する前提として、利用実態の把握が欠かせません。
- 経路の把握: 会社として契約している経路と、個人利用の実態
- 利用量の把握: 部署ごとに、どれだけ使っているか
- キーの把握: APIキーが誰の手元に何本あるか
利用量とキーの把握は、プロバイダの管理APIが返す利用量のメタデータで行えます。プロンプトの内容に触れずに把握できるため、それ自体が新しいリスクを生みません。
よくある質問
Q. 生成AIの利用を全面的に禁止すれば安全ですか? 禁止すると、個人のスマートフォンや自宅のPCでの利用(シャドーAI)が増え、かえって把握できなくなります。会社の経路を用意し、ルールと可視化で統制するほうが現実的です。
Q. どのリスクから手を付けるべきですか? 多くの企業では、機密情報の入力とシャドーAIの対策(ルールと会社の経路の整備)、APIキーの管理から始めるのが効果的です。
Q. 8項目で十分ですか? 業務で使う範囲の主なリスクは8項目でカバーできます。生成AIを自社製品に組み込む場合は、プロンプトインジェクションなど、アプリケーションとしてのリスクも別に検討します。
まとめ
- 企業の生成AI利用のセキュリティリスクは、機密情報の入力・学習への利用・外部への保存・APIキーの漏えい・不正確な出力・権利侵害・シャドーAI・外部ツールへの依存の8項目
- 対策の層は、入力・出力・アクセス・契約と設定・構成に分かれる
- 優先度は起きやすさと影響の大きさで付ける。多くの企業では機密情報の入力・シャドーAI・APIキーが先
- 対策の前提として、プロンプトに触れずに利用実態(経路・利用量・キー)を把握する
ManageAIは、プロバイダの管理APIから利用量のメタデータだけを取得し、プロンプト原文は構造上取得しません。通信経路にも介在しないため、導入によって新しいリスクを増やさずに、部署別の利用状況とAPIキーの利用を可視化できます。モニター企業を募集中です。
関連記事
次に読む
この記事を書いた人
モニター企業募集
初期費用0円・月額5万円(税別)
先着5社・2026年11月末まで
5プロバイダの利用量と費用を部署・利用者・APIキー別に可視化。読み取り専用キーの登録だけで当日から始められます。
募集要項を見る資料請求・お問い合わせ