生成AIツールのセキュリティチェックシート|確認項目と回答例
生成AI関連のツール・SaaSを導入するときに使えるセキュリティチェックシートの確認項目を、データの範囲・認証情報・アクセス制御・テナント分離・通信と基盤・ログ・可用性・データの削除・第三者認証の9分類で整理し、望ましい回答例と注意が必要な回答例を示します。生成AI特有の確認点も解説します。

生成AI関連のツールを導入するときのセキュリティチェックシートは、一般的な SaaS の確認項目に加えて、「プロンプトの原文を取得するか」「通信経路に入るか」「預ける認証情報の権限はどこまでか」という生成AI特有の3点を必ず入れます。この3点で、ツールを導入したことによって増えるリスクの大きさがほぼ決まります。
この記事では、チェックシートの確認項目を9分類で整理し、望ましい回答例と注意が必要な回答例を示します。審査の進め方は「生成AI関連SaaSのセキュリティ審査|情シスが見るポイント」、全体像は「生成AI導入のセキュリティ 完全ガイド」を参照してください。
確認項目の9分類
| # | 分類 | 主な確認項目 |
|---|---|---|
| A | 取り扱うデータ | 取得するデータの範囲、プロンプト原文の扱い |
| B | 認証情報・秘密情報 | 預ける認証情報の権限、暗号化、表示、失効 |
| C | アクセス制御・認証 | 認証方式、多要素認証、権限の種類、アカウント発行 |
| D | テナント分離 | 他社のデータとの分離の方法、検証 |
| E | 通信・基盤 | 暗号化、データの所在地、環境の分離、脆弱性管理 |
| F | ログ・監査 | 操作の記録、改ざんの防止、保持期間 |
| G | 可用性・バックアップ | 停止時の影響、バックアップ、復旧 |
| H | データの保持・削除 | 保持期間、解約時の削除、バックアップからの消去 |
| I | 第三者認証・監査 | 認証の取得状況、監査の実施状況 |
生成AI特有の3つの確認項目
1. プロンプト原文を取得するか(分類A)
| 回答の例 | 評価 |
|---|---|
| 原文を取得する仕組みがない(利用統計のみを読み取る) | 望ましい。構造上の制約 |
| 原文を取得するが保存しない | 注意。取得の時点で原文を扱っている |
| 原文を取得・保存する。保存期間は◯日、国内に保存 | 目的に照らして判断。アクセス権と削除の確認が必要 |
| 設定で原文の取得を止められる | 注意。既定の設定と、変更できる権限を確認 |
2. 通信経路に入るか(分類E・G)
| 回答の例 | 評価 |
|---|---|
| 通信経路に入らない。停止しても生成AIの利用に影響しない | 望ましい |
| 通信経路に入る(ゲートウェイ・プロキシ)。冗長構成で可用性を確保 | 停止時の影響と、障害時の迂回の手順を確認 |
3. 預ける認証情報の権限(分類B)
| 回答の例 | 評価 |
|---|---|
| 利用量・費用の読み取り専用の権限だけ | 望ましい |
| モデルを呼び出せる APIキーを預ける | 注意。漏えい時に不正利用のリスクがある |
| 管理者権限を預ける | 原則として避ける |
分類別の確認項目と回答例
B. 認証情報・秘密情報
| 確認項目 | 望ましい回答の例 |
|---|---|
| 暗号化の方式 | 認証情報ごとに暗号化し、鍵は別の場所で管理している |
| 復号のタイミング | 処理の実行時のみ |
| 画面での表示 | 登録後は末尾の数文字のみ。全文を再表示する機能がない |
| 失効 | 利用者側のプロバイダの管理画面でいつでも失効できる |
| ログへの出力 | 認証情報がログやエラーメッセージに出ないようにしている |
C. アクセス制御・認証
| 確認項目 | 望ましい回答の例 |
|---|---|
| 多要素認証 | 対応している |
| アカウントの発行 | 招待制。自己登録はできない |
| 権限 | 管理者と閲覧者など、役割に応じて分かれている |
| SSO | 対応しているか、未対応ならその旨の開示 |
D. テナント分離
| 確認項目 | 望ましい回答の例 |
|---|---|
| 分離の方法 | データベースの仕組みで、他社の行を参照できないよう強制している |
| 検証 | 他社の識別子を指定したアクセスで、データが取得できないことを確認している |
E. 通信・基盤
| 確認項目 | 望ましい回答の例 |
|---|---|
| 通信の暗号化 | すべて TLS |
| 保存時の暗号化 | データベースのストレージを暗号化している |
| データの所在地 | 国内のリージョン(例: 東京)。国外の場合はその国と理由 |
| 環境の分離 | 本番と検証の環境を分離している |
F・G・H. ログ・可用性・削除
| 確認項目 | 望ましい回答の例 |
|---|---|
| 監査ログ | 管理操作を記録し、利用者が改ざん・削除できない |
| バックアップ | 自動バックアップと、復旧できる時点の説明 |
| 解約時の削除 | 認証情報と収集データを削除し、完了を報告する。バックアップからの消去時期の説明 |
I. 第三者認証・監査
ISMS や SOC 2 などの第三者認証は、取得していれば審査の負担が大きく減ります。取得していない場合も、その旨を正直に開示し、代わりに説明資料や個別の回答で補う提供元は、誠実に対応していると評価できます。未対応の事項を隠す提供元のほうがリスクは大きいと考えます。
注意が必要な回答のパターン
| パターン | 注意点 |
|---|---|
| 「業界標準のセキュリティ」など、具体性のない回答 | 具体的な方式・範囲を再質問する |
| 「保存しません」の根拠が示されない | 構造上か設定か、データフローで確認する |
| 未対応の項目を空欄のまま返す | 未対応なのか、回答漏れなのかを確認する |
| 認証情報の権限が過大 | 読み取り専用で済まない理由を確認する |
チェックシートの使い方
- 自社の標準のチェックシートに、生成AI特有の3項目を追加する
- 提供元の公開資料(セキュリティの説明資料)で答えが分かる項目を先に埋める
- 残りを提供元に質問する。回答期間を確認する
- 未対応の項目は、自社の要件として必須か、代替の対策で許容できるかを判断する
- 判断の結果と理由を記録し、年に一度見直す
複数のツールを比べるときの表
同じ目的の複数のツールを比べるときは、生成AI特有の3項目と、自社の必須要件を並べた表を作ります。
| 項目 | ツールA | ツールB | ツールC |
|---|---|---|---|
| プロンプト原文の取得 | 取得しない(構造上) | 取得・保存する(30日) | 設定で止められる |
| 通信経路への介在 | 入らない | 入る | 入る |
| 認証情報の権限 | 読み取り専用 | モデル呼び出し可 | 読み取り専用 |
| データの所在地 | 国内 | 国外 | 国内 |
| 自社の必須要件(例: 多要素認証) | 対応 | 対応 | 対応 |
(表の値は説明のための架空の例)
表にすると、機能の比較では見えなかったリスクの差が明確になります。
よくある質問
Q. 生成AIの提供元(OpenAI など)にも同じチェックシートを使いますか? 生成AIの提供元は、公開している規約・セキュリティの資料で確認するのが一般的です。このチェックシートは主に、生成AIの周辺で使うツール(可視化・ゲートウェイ・分析など)の審査に使います。
Q. 第三者認証がないツールは導入できませんか? 自社の規程によります。必須とする規程がなければ、説明資料と個別の回答で判断します。取り扱うデータの範囲が小さい(原文を扱わない、読み取り専用の認証情報だけ)ツールは、リスクが相対的に小さくなります。
まとめ
- 生成AI関連ツールのチェックシートには、原文の取得・通信経路への介在・認証情報の権限の3項目を必ず入れる
- 9分類(データ・認証情報・アクセス・テナント分離・通信・ログ・可用性・削除・第三者認証)で確認する
- 「保存しません」は構造上か設定かを確かめ、具体性のない回答は再質問する
- 未対応の事項を正直に開示する提供元は評価できる。必須かどうかを自社の要件で判断する
ManageAIのセキュリティの回答は、「セキュリティチェックシートへのManageAIの回答例」で公開しています。プロンプト原文を構造上取得せず、通信経路に介在せず、預かる認証情報は読み取り専用です。データは AWS 東京リージョンで管理しています。貴社様式のチェックシートにも回答します。資料請求・お問い合わせからご依頼ください。
関連記事
次に読む
この記事を書いた人
モニター企業募集
初期費用0円・月額5万円(税別)
先着5社・2026年11月末まで
5プロバイダの利用量と費用を部署・利用者・APIキー別に可視化。読み取り専用キーの登録だけで当日から始められます。
募集要項を見る資料請求・お問い合わせ